クラフティ・ビール vs 独立系クラフトビール

1998年、ミラー・クアーズ(Miller Coors)社が破産寸前の5世代続いた家族経営ビール醸造所Jacob Leinenkugel社を買収しました。この買収をきっかけに、クラフトビール醸造所の買収が増加し(情報源:Vinepair)、現在では、大手醸造所に完全又は一部買収された醸造所とアメリカのBrewers Association(醸造者協会)の間で論争が生じています。まさに1998年は「クラフティ・ビール(クラフト風なビール)」という言葉の黎明期と言える年となりました。

多くのビール・ジャーナリストがクラフティ・ビールと独立系クラフトビールという呼び名について徹底した議論を展開しており、業界は混乱し始めています。この議論には政治的問題が多く存在し、クラフト・ブリュー・アライアンス社CEOのアンディ・トーマス氏はこのような事態に対して「Don’t bash beer – celebrate beer(ビールを批判するのではなく、褒め称えよう)」(情報源:Brewboound)とコメントしています。私たちは、日本も全く同じだ状況と思います。日本では独立系と大量生産系の境界線が曖昧なために、全貌を調査し理解するには、相当な労力を必要とします。

Jacob Leinenkugel社やクラフト・ベリュー・アライアンス社傘下のコナビール社などの醸造所を差別化するために最初に使われた呼び名の1つが「クラフティ・ビール(クラフト風なビール)」でした。クラフティはネガティブな意味があり、そのため批判的に使われるケースが多々ありました。グランド・キリンやサントリーのクラフトセレクトは明らかに、特にそのラベルで「クラフティ」と言えますが、ヤッホーブルーイング社のよなよなエールは、独自のレシピを維持し醸造のメインラインには何も変更を施していないように思われるため、「クラフティ」とは呼び難いでしょう。ヤッホーブルーイング社が大手醸造所に寝返ったからといって、同社が良いビールを造っていないということではありません。

Brewers Associationは2017年、「クラフティ・ビール」という呼び名は業界に悪影響があると判断したようで、「独立系クラフト(independent craft)」のラベルを作成し希望醸造所向けに有料で使用を許可しました。監査を実施し、公表した基準に基づき希望醸造所に対して使用を許可するかどうかを決定します。Association of Microbrewers of Quebec(ケベック大規模醸造所協会)(情報源:CBC)も、2018年に独自のラベルを作成しました。今後も多くの団体が独自の基準とラベルを検討していくと思われます。唯一の懸念は、ビール・マニアだけがこの問題に関心を示し、一般人の購買行動には何も影響は出ないだろうということです。

タイヘイのモットーは「好きなものは好きなんだから仕方ない」です。すべての醸造所が全身全霊をかけて、自分たちのビールを造っています。私たちが彼らのビールを好きであろうと嫌いであろうと、すべてのビールに市場があります。例えば、ビールの味がしないちょっと変わったビールを飲みたいのであれば、栃木の大手醸造所によるビールフェスタで提供しているものを試してみてはどうでしょう。また、ライト系のビールや口直し的なビールであれば、アサヒスーパードライがお薦めです。このようにビールの種類は膨大で、醸造所は常に自分たちが造りたいものを造っています。

先ほどの呼び名問題に解決を見いだすのであれば、「独立系クラフト」は小規模醸造所にとっては良い呼び名です。しかし、その場合クラフト・ブリュー・アライアンスの傘下にある醸造所など、大手醸造所から支援を受けている醸造所の呼び名を別に付ける必要があります。クラフトビール醸造所であり、良質なビールの醸造に熱心に取り組みつつ、「小規模な」独立系の醸造所よりも支援を受けているという意味で、「大手支援クラフト(macro supported craft)」と呼ぶことができると思います。この呼び名は、「ハンディキャップ(handicap)」や「障害のある(disabled)」が、時と共に相手の名誉を傷つけるようになってしまったのと同じように、将来的に軽蔑的とみなされるかもしれません。そのため、私たちには解決策は見いだせませんが、2014年にアンディ・トーマス氏がクラフト・ブリュー・アライアンスのCEOに就任したときに語ったように、私たちは「Don’t bash beer!(ビールを批判してはいけないのです!)」。

*独立系クラフトブリュワリーのロゴは、アメリカの醸造者協会のご厚意により掲載させていただきました。

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