TDM 1874 Breweryのジョージさん インタビュー

TDM 1874 Breweryのジョージさんとは?

TDM 1874は横浜市十日市場にあります。2017年1月からクラフトビール業界に参入した新しいビール醸造所です。TDM 1874 Breweryのお店の外観は、400Lから800Lのスチール製や銅製の発酵タンクが輝きガラスと煉瓦で飾られ、その輝きでお客さんを歓迎しています。「新しい」というのは、経験不足という意味ではありません。TDM 1874のオーナーは1874年創業の坂口屋です。坂口屋は関内と青山に店舗(マルシェ・ディジュール(Marche Dix Jours’))を持ち、ワインや日本酒を取り扱っています。TDMは、Ten(十)、Days(日)、Market(市場)の頭文字であり、十日市場の直訳で、十日市場の地域向けの醸造所です。

この醸造所の所長がジョージさんです。私たちは、彼が作り出す素晴らしいビールについて、彼のお母様に感謝しなければなりません。

「私のバックグラウンドは、13歳の時に始めた自家醸造です。母が私にエルダーフラワーシャンパンを作らせたのです。私は、とても夢中になりビールの醸造も始めて、その後オールグレインのマッシングにも手を出しました。

私はブライトン大学に入学しましたが、退屈な日々を送っていました。ブライトンは物価が高い町で、いつも金欠状態の気分でした。ビールのことで頭をいっぱいにするために、友人とたくさんの自家醸造酒を作りました。そして、地元のパブにも行き、店員に自分たちのビールのサンプルを渡していました。ある日、地元の醸造所のDark Star Brewingのビール醸造者の1人にやっと私のビールを渡すことができ、その翌日に私は仕事をオファーされました。19歳の時、大学を辞めてDark Starで働き始めました。4年半、Dark Starで働き、セカンド・ブリュワーまで上り詰め、製造管理のポジションにも就きました。

大学を辞めると同時に、時間を持て余さないように日本語の勉強を始めました。日本に数日間休暇で訪れた後、私は海外に住み、様々な技術を学びたいと思うようになりました。」

-ジョージ

インタビュー:

タイヘイ:常陸野ネストビールで働き始めたのはいつですか。

ジョージ:2011年に日本に来て、1年間、木内酒造(常陸野ネスト)で働きました。イギリスで良い仕事に就いていた後だったので、ハードな一年でした。また、一から出直し、工場で働きましたし、茨城は東北の震災の影響も大きく、個人的にも苦難の年でした。

タイヘイ:ブリマーブルーイングBrimmer Brewing)ではどのくらい働いていましたか。どうやって、ブリマーブルーイングのスコットさんの気を引いたのですか(私も履歴書を出す準備は万端です)。

ジョージ:スコットさんとは、私が2回目に日本に来たとき以来の友人です。ビール業界の私の友人が彼に連絡を取ってくれて、彼と一緒に静岡で2,3日過ごしました。当時、スコットさんは御殿場高原ビールで働いており、その周辺の醸造所を一緒に周りました。その時、バイエルンマイスタービールに私を紹介してくれました。バイエルンマイスタービールは、私が好きな日本の醸造所の1つでした。

木内酒造を辞める準備をしていたとき、ブリマーブルーイングが醸造所設立の最終段階に入っており、私を雇ってくれました。私は、設立の1年間、ブリマーブルーイングで働きました。ブリマーブルーイングでの時間は、とても充実した日々でした。しかし、2つの経験ある醸造所で働いただけでは十分ではありませんでした。2012年末に、私はブリマーブルーイングを去りました。

木内酒造やブリマーブルーイングが成長していく過程に立ち会えたことは、とても素晴らしい経験でした。今では、タンクスペースも拡張し、2つの醸造所ともに繁盛しています。またいつかブリマーブリューイング ポーターを飲みたいですね。あのビールが、たまらなく好きなんですよ!

タイヘイ:Dark Star Brewingには、どのビールを渡したんですか。そのビールをTDM 1874でも、まだ作っていますか。もし作っていないなら、どんなビールでしたか。

ジョージ:実をいうと、覚えてないんですよね・・・11年前はたくさんのビールを自家醸造していましたが、そのなかに入っていないかもしれません。なので、どんなビールだったかはわかりません。

タイヘイ:どうやってTDM 1874のヘッドブリュワーのポジションに就きましたか。

ジョージ:2016年に、ビアキャッツで働いていた友人のトッド・スティーブンスが坂口屋の加藤社長に私を紹介してくれました(トッドは前職で加藤社長の娘さんの同僚でした。醸造所を建設中に社長がトッドに醸造所で働く人材を紹介してくれないかと尋ねたそうです)。そして、私はTDM1874 Breweryでの仕事を手に入れました。TDMは私にとって素晴らしい職場で、自由にビールを醸造することができます(私たちの顧客の大半はビール初心者のため、そのことを頭に置きながら、無理のない範囲で、ビールを作っています。まだビール好きの人たちには提供していませんが、彼らをも魅了するようなビールをもうすぐ作る予定です)。またTDMは私にワインについても学ぶチャンスをくれました。この会社で働き始めてから、私はワインも大好きになりました。まったくの未知の世界に連れて行ってくれる人たちが傍にいてくれることは、本当に助けになります!

タイヘイ:英語を教えていた3年半の休暇明けの初日は、どのような気分でしたか。

ジョージ:少し緊張していました。でも、最初の数週間はそんなに忙しくはありませんでした。私が以前働いていた会社とは全く違っていました。それなりに日本語も知っていましたが、言葉の壁は大きかったです。英語を教えていた時ほど上手くいきませんでしたし、英語ばかり話していました。

でも、TDMで働き始める前に5週間の休暇を取っていたので、特に、これから数か月で始まる出来事を想像すると、ビール醸造の仕事に戻れることが本当にうれしかったです。

タイヘイ:TDMで最初に醸造したビールは何ですか。

ジョージ:最初のビールはペールエールです。私が作りたかったよりもアルコール度数はかなり高くなりましたが、それほど悪くはありませんでした。今では、格段にすっきりした味わいで、さらに洗練されビールになっています。

タイヘイ:さらに改良するためにビールの醸造方法のこれからも調整を続けますか。

ジョージ:はい、調整していましたよ。現在では、既にメインのラインナップ商品に関しては、醸造方法の変更はあまり行っていない段階です。醸造家にとって、設備の機能や、目的のビールを醸造するための調整方法に慣れるのは、骨が折れる仕事です。

タイヘイ:「TDMの顧客の大半に合った醸造」と仰っていましたが、それは日本人が、サワー、スタウト、ウィートなどのようなスタンダード以外のビールに慣れていないという知識不足によるものだと思いますか。

ジョージ:というよりも、日本人がそのようなビールに接してこなかったことが要因だと思います。醸造の伝統について長い歴史があるイギリスでも、それは同じです。しかし、日本では、さらに、最初に飲むビールが、ラガー以外の種類を昔からあまり持っていないアサヒやキリンなどのビールであることが多いです。

サワーについては、ほとんどの人たちがその魅力を感じていません。酸味と辛味が強い日本食はわずかしかありません。なので、これらのスタイルにトライするのは後回しになりがちです。もちろん、ごくわずかですが、サワー系のビールが大好きな人たちもいます。でも、アメリカやベルギーほど多くはありません。

タイヘイ:日本の醸造所のなかで、一番尊敬している醸造所はどこですか。また、その理由を教えてください。

ジョージ:特にそのような醸造所はありませんが、あえて挙げるとしたら、、、

ヨロッコビール:ここのビールは素晴らしいです。醸造についての基本理念が大好きです。ビールはどれもソフトで個性的です。

デビルクラフト:ここのビールも素晴らしいです。常に探求心を持って新しいことに挑戦する姿が大好きです。どのビールも印象的なものばかりです。

タイヘイ:日本のクラフトビール市場は既に飽和状態だと思いますか。

ジョージ:いいえ、でも、たぶんもう直ぐそうなるかも知れません。クラフトビール市場が拡大していくのを見て、「え?なんで?」と疑問に思いながらも、醸造の経験や知識を持たず開業してしまう醸造所が増えると思います。それは少し心配です。

開業するクラフトビール・バーの数は落ち着いているようです。タップのスペースが詰まっている醸造所もいくつかあるかも知れません。

しかし、良好な国内産ビール向けのスペースは、日本市場にまだまだたくさんあります。

タイヘイ:ここで話題を変えましょう。ラーメンは好きですか。ラーメンと一緒にビールを飲むことはあまりないと思いますが、もし合わせるなら、何と合わせますか。

ジョージ:ラーメンは好きです。水ですね。塩分を抑えるために水を飲みたいです。ラーメンにはそれで十分です。

タイヘイ:Dark Starではカスク・コンディション・ビールだったと仰っていました。ビールに関する知識が不足している私たちに、ボトリングとケグ・コンディション・ビールとはどのように工程が異なるのか教えていただけますか。

ジョージ:カスク・コンディション(樽内熟成)・ビールは、樽の中で第2発酵が行われます。つまり、この工程で作られたビールは柔らかい炭酸になります。ビールをもっとドライにするために余分なCO2に頼ることができないため、醸造方法形成を考慮する必要があり、ケグとは全く異なったアプローチです。

残念ながら、日本にはカスク・コンディション・ビールがあまりありません(しかし、ベアードビールは、カスク・コンディション・ビールでよい仕事をしています)。カスク・コンディション・ビールに関する問題は、ビールに入る空気(ビールの天敵である酸素)であり、2,3日でビールがダメになってしまいます。しかし、ケグであれば、酸素でビールをダメにすることなく、CO2または窒素ガスを使って、ビールを押し出すことができます。

私はカスク・コンディション・ビールを醸造したいのですが、樽に蛇口を取り付けたら2,3日以内に販売しなければならず、日本の市場には向いていません。

タイヘイ:母の日にエルダーフラワー・ビールを贈りますか。そのビールにどんな名前を付けますか。

ジョージ:エルダーフラワー・ビールを醸造していますが、夏だけです。母の日の時期ではないのですよ。

タイヘイ:どのようなスタイルのビールを醸造していますか。

ジョージ:いろいろな国の多種多様なスタイルのビールを醸造しています。しかし、イングランドなどのイギリススタイルを醸造することに固執してしまうことが、多々あります。イギリスの麦芽を使う傾向がありますが、アメリカのホップも好きです。年間を通して醸造しているビールは、ブリティッシュ・ベスト・ビター(BBB)、ペールエール、浜なしGOSE(醸造所の近くで収穫できる浜なしという品種の梨で作られたビール)、そしてIPAです。IPAにはナンバリングしてあり、今はIPA#4です。お客さんに幅広い様々なIPAを提供できるように、異なった新しいホップをいろいろと試しています。残念ながら、日本では西海岸、カリフォルニアスタイルのIPAが好まれています。しかし、IPAはそれ以上に幅広い種類があります。

タイヘイ:数週間前、午前10時にSuper Dullのロング缶を電車の中で飲んでいるサラリーマンを見ました。午前9時にクラフトビールを飲んでいる人を見かけたら、どう思いますか。

ジョージ:午前9時にクラフトビールを飲む人も、きっといますよ。午前5時でも、どこかで誰かが飲んでいるでしょう!

タイヘイ:もしご自身の醸造所を設立するとしたら、どのような名前にしますか。私は、自分の醸造所にはBeery Mcbeerfaceと名付け、ロゴは髭のないZZ Top(アメリカのロックバンド)のメンバーにします。

ジョージ:Juniper(セイヨウネズ)の日本語、「イブキ」にするつもりです。でも、ホップをイブキと名付けてしまった人がいるので、少しその気持ちは薄れています。

タイヘイ:では、醸造所を始めるとしたらどのようなシステムを採用しますか。その理由も教えてください。資金についてはご心配なく。タイヘイの創設者が補填しますよ(ヒント:アグリーな方の創設者が)。

ジョージ:もし金額が書いていない小切手があるなら、Rolecを選ぶでしょう。Rolecは醸造システムのロールスロイスです。

タイヘイ:自家醸造から商業的な醸造に移ったときの一番の驚きは何ですか。

ジョージ:醸造って本当になんて危険で、地味なんだろうと思います。自家醸造で注意すべきことは、沸騰させ過ぎないこと、もしくは自分の足の上に落とさないことです。プロの醸造所では、予防策を講じていても、いとも簡単にケガをしてしまいます。

化学物質を除去するのは非常に危険な作業で、火傷するくらい熱いパイプと熱湯を大量に使います。

プロの醸造所はとても魅力的で、毎日ビールを買ってもらえるというイメージがあります。でも、現実はとてもかけ離れています。とてもハードな仕事です。でも、私はこの仕事が大好きです。

タイヘイ:とても様々なシステムと発酵タンクを使ってきたと思います。違いについて教えてください(掃除にかかる時間もお願いします)。

ジョージ:かなりたくさんのシステムを使ってきました。Dark Star Breweryで仕事を始めた時、古い工場ではUK15BBL(約200リットル)、第2工場ではUK45BBL(約7,300リットル)でした。大きいタンクも小さいタンクも掃除には同じくらいの時間がかかりました。

常陸野ネストには、いくつかシステムがありましたが、私は1,000リットルのタンクだけを使っていました。これはBrimmer Brewingのシステムと同じサイズです。

大きな違いは工程ですが、使いやすいシステムもあれば、そうでないものもあります。手作業でバルブを開ける際には、走り回らなければならないものもあります。Dark Star Breweryの45BBLは私のお気に入りでした。一度に大量のビールを作れるんですよ!

TDM 1874では、これまで私が使った中で一番小さいシステムで、400リットルです。それは、それで克服すべき課題があります。でも、このシステムは非常に使いやすいです。

タイヘイ:最初の自家醸造はうまくいきましたか。何かとてつもない失敗などありましたか。

ジョージ:かなり良い感じでした。失敗談は本当にありません。でも、ワイルのボトルのコルクを破裂させてしまったり、醸造バケツの蓋を爆発させてしまって夜中に飛び起きたりしたはあります。

タイヘイ:醸造工程に加えるとしたら、どんなクレイジーな材料を試してみたいですか。

ジョージ:そうですね・・・・ビールに加えられるものはすべて試しました。実験はとても役に立ちますが、「できるからといって、やるべきだということではない」が醸造をする上での私のルールです。

果物やトウガラシ、花、木、パラダイスシードなど、ありとあらゆるものを使って醸造してきました。時には新しいビールからインスピレーションを得ることもありますが、季節によって変わります。

タイヘイ:最後の質問です。ちょっとふざけた質問ですが、ジョージさんのビールをイギリスのコメディアンに例えるとしたら、それぞれのビールは誰に当てはまりますか?

ジョージ:いくつかはシーン・ロック(Sean Lock)です。ドライで、一口ですべてを夢のような世界にしてしまうでしょう。

ジョージ・ジュニパー

TDM 1874 Brewingの提供店

TDM 1874 Brewery (タップルーム)

東京・北23区

東京・西23区

横浜

情報

醸造所名 TDM 1874 Brewing
ホームページ http://www.sakaguchiya.co.jp/
電話番号 045-985-4955
Facebook https://www.facebook.com/tdm1874brewery/

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